普通の生活が
難病による入院生活で一変。
2か月後には
携帯電話が契約できない状態へ

ブラックリストになるなんて
夢にも思わなかった

東京都で一人暮らしのSさんは、まだまだ働き盛りの30代だ。人柄がよく明るい好青年といった風貌の彼は、以前は建設業で生計を立てていたという。そんな彼の生活が一変したのは、病気による入院生活だった。入院中に携帯電話を契約できなくなるとは何があったのか。リスタート・ケータイを利用するまでの経緯を答えていただいた。

【Sさん】
私は建設現場で解体や清掃をする仕事で、生計を立てていました。10年近く勤めており、大型商業ビルの完成に立ち会えたりする達成感がとても好きでしたね。そんなある日、普段通りに仕事をしていると、ふと体に異変を感じました。最初はめまいと手が痺れる程度だったので、ただの体調不良だと思い通院しなかったんです。数日間様子を見たのですが良化せず、休日に病院に行こうと思っていました。しかし、仕事中に突然ろれつが回らなくなり急いで病院へ。

診察の結果は脳の病気との事。緊急入院が必要と言われましたが、訳が分からず目の前が真っ暗になりましたね。治療は上手くいくのか。今後の生活はどうしたらいいのか。生きられるのか。胸が押しつぶされそうな日々を過ごしていました。入院中は仕事ができないので収入も途絶えてしまい、あっという間に生活費が底をつきました。携帯電話料金も未納が続き強制解約へ。私は両親ともに他界しており、頼れる身内もいない。お金を借りる当てもないので生活が立ちいかなくなり、生活保護を申請しました。連絡先がない状態での入院生活は本当に苦労しましたね。ケースワーカーさんや友人と連絡が取れないので、公衆電話まで電話をかけに行く日々。メールの返信も出来ないので友人関係も疎遠になりました。

今時、携帯電話がない生活を想像できますか?入院がきっかけで携帯電話の契約がブラックリストになるなんて夢にも思わなかった。入院中は将来への不安や孤独感から、ノイローゼになりそうでした。

負のスパイラルを抜け出すためにリスタート・ケータイへ

負のスパイラルを
抜け出すために
リスタート・ケータイへ

突然の病気により生活が一変したSさんの話を聞いて、私は同じ30代として他人事とは思えなかった。働き盛りの男性が、1.仕事、2.健康、3.友人関係。この3つを同時に失った場合、目の前が真っ暗になり不安に押しつぶされそうになる事は容易に想像がつく。しかし、そこで諦めずに病気と闘いながら自立を目指したSさん。どういった経緯でリスタート・ケータイを知ったのかを聞いてみた。

【Sさん】
退院後に、相談をしていた福祉課の就労支援員さんにサービスを聞きました。生活保護を受けてはいたのですが、退院後はとにかく早く仕事がしたかったです。いつまでも生活保護を受けているわけにはいかないですからね。病院から最低3カ月は休むように言われましたが、いてもたってもいられなくて就労に向けて行動をしていました。支援員さんと面談を重ねて、治療をしながら働く事は決まったのですが、条件に合う仕事に就くことが難しい。なぜなら連絡先が無い求職者に対して、企業側が難色を示すからです。連絡先が無くても働ける仕事はハードな内容が多く、通院しながら働くことができない。退院した時は仕事をしてから携帯電話を再契約しようと思っていましたが、連絡先がないと就職ができない。就職ができないから、いつまでも連絡先が持てない。負のスパイラルですよね。仕方がないので就職を諦めて、生活保護に頼って生きていこうと思った時に、リスタート・ケータイの事を就労支援員さんに聞きました。藁にもすがる思いで、申し込みを即決しましたね。

契約方法も簡単でその場で利用を決めた

契約方法も簡単で
その場で利用を決めた

Sさんの話を聞いて思ったことがある。それは通信困窮者に対する認識の甘さだ。誰でも何かしらのきっかけで躓くことはある。しかし、本人が立ち直ろうともがいても、社会は通信困窮者に対して非情である。携帯電話を補助するような公的支援が日本には存在しないからだ。携帯電話がないことで、結果的に仕事も決まらない。住所も契約できない。銀行口座も作れない。こういった問題があるにもかかわらず、携帯電話に対するセーフティネットがない。結果として、いつまでも生活保護から抜け出せない構造が出来上がっている事が伺えた。続いてリスタート・ケータイを利用していただいた感想を聞いてみた。

【Sさん】
話を聞いたときは機能が劣っていないか、料金は高額ではないのかという不安はありました。しかし、就労支援員様とリスタート社員の方の双方と話をしながら契約した事で不安はなくなりました。リスタートの方々は、こちらの事情や背景を一通り理解してくれており、安心して相談する事ができましたね。契約方法も簡単なので、その場で利用を決めました。契約後はすぐに携帯電話が届き、すぐに就労支援員さんと二人三脚で就職活動を開始。無事に1回の面接で採用となりました。採用になった面接では連絡先の有無を聞かれたので、リスタート・ケータイを利用していなければ不採用だったのかもしれない。疎遠になっていた友人達とも連絡が取れるようになり、皆が心配してくれていた事を知りました。仕事や友人との連絡ツールだけでなく、自宅療養時の緊急連絡先としても使えている。ネットで調べ物をしたりもできるので、大変満足して使っています。

仕事が決まり夢を叶えるために前向きに頑張って行く

仕事が決まり
夢を叶えるために
前向きに頑張って行く

仕事や友人との繋がりを取り戻したSさんは、契約時にお会いしたときよりも声に明るさが感じられた。私は様々な施設を訪問する中で、連絡手段がないために救急車を呼べず、亡くなる命がある事を聞いていた。Sさんも療養中だからこそ、携帯電話による緊急連絡手段の確保が必要不可欠なのだろう。再就職を果たして、生活を立て直すために前を見据えるSさんに今後の目標や夢を聞いてみた。

【Sさん】
清掃の仕事が決まったので、まずはしっかりと体調を整えていこうと思っています。せっかく仕事が決まったのに、体調が整っていなければ会社に迷惑をかけてしまいますから。あとは仕事を頑張って収入を増やしていき、生活の質を向上していきたいですね。以前は旅行が好きで、ご当地グルメやそこでしか見られない景色を見ることが好きでした。また旅行に行くために頑張りますよ。一番の夢はヴェネツィア旅行に行く事ですね。水の都としてTVで紹介されていた景色がずっと記憶に残っていて、いつか自分の目で直接見にいきたい。その夢を叶えるために前向きに頑張っていこうと思っています。

impressions

病気と向き合いながら、ようやく自立までの準備が整ったSさんの話を聞いて、携帯電話は単なる娯楽や電話をするだけのツールではないと、ひしひしと感じた。生活のインフラだけではなく、個人の信用を担保する存在となっている携帯電話を、本当に困っている人が入手しやすくなるように取り組んでいきたい。そう考えさせられるインタビューだった。

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