退職をきっかけに
連絡先も失ってしまった。
会社支給の携帯電話で生活を
するリスクとは。

会社支給の携帯電話を失い
再就職が困難に

神奈川県の繁華街近くにお住いの60代男性のIさん。Iさんは初対面時からとにかく明るい方だった。Iさんは現在、生活困窮者向けの宿泊所で生活をしている。Iさんは、以前は会社支給の携帯電話を、直近では宿泊所の電話を使って仕事をしていた。それぞれに苦労があったという。そして、リスタート・ケータイの契約後、どのように生活環境が変わったのか。その点をインタビューをしてきた。まずは、Iさんがリスタート・ケータイを利用するまでについて答えていただいた。

【Iさん】
携帯電話がなくなったきっかけは、以前働いていた警備会社を退職したことです。元々、携帯電話料金の未納で自身の名義はブラックリストに載っており、携帯電話の契約が出来ない状態でした。ブラックリストの原因は、お恥ずかしい話ですが、金銭的に余裕がない時期があったこと。その時期に、携帯電話代の支払いが滞ってしまったことです。それでも前職の警備会社は、会社支給の携帯電話を貸し出していたので、携帯電話がなくて困ることはなかったです。それが当たり前になってしまい、自分自身の携帯電話をもっていない事に対する危機感は全くありませんでした。

4年程会社支給の携帯電話を用いて生活をしていましたが、ある日仕事でトラブルが起こりました。大手企業の施設警備に携わっていたのですが、私のミスで企業のカギを紛失してしまった。気づいた時は本当に焦りましたね。朝方まで必死に探し回っても鍵は全く見つからない。個人情報や機密情報の流出を想像すると、帰宅後も眠れませんでした。幸いなことに翌日には鍵が見つかりました。しかし、上司と施設運営側に報告を上げていた為、鍵の紛失未遂が大きな問題となってしまったのです。私は責任を取る形で職場の変更を命じられました。社内では気にせず頑張ってくれと言われました。しかし、私は完全に憔悴しきっており休職を申し出ました。最初は3カ月程度休職する予定でしたが、それっきり会社に行くことはできなくなりました。

当然ですが、私が会社から借りていた携帯電話は使えなくなり、連絡先も失ってしまいました。別の会社で働くために、求人に応募をしても面接にすら進めませんでした。面接に通らない原因は、恐らく連絡先がなかったことだと考えられます。私の収入は完全に途絶えてしまったので、家賃を払うこともできません。私は、生活保護を受けてNPO法人が運営する生活困窮者向けの宿泊所で生活をする事になりました。

早く働いて自立するためにリスタート・ケータイへ

早く働いて自立するために
リスタート・ケータイへ

会社用の携帯電話を自身の連絡先にしている人は知って欲しい。Iさんの様なリスクが潜んでいることを。一度会社を辞めてしまうと、仕事だけでなく連絡先も失ってしまう。連絡先がないことは、再就職の際に大きなハンデとなる。私たちは仕事柄、携帯電話がないことを起点に採用面接の不合格が続くこと。自身の就労意欲も萎んでしまうこと。生活困窮のスパイラルにハマってしまう人がいること。これらについて熟知している。続いてIさんがどういった経緯でリスタート・ケータイを知ったのかを聞いてみた。

【Iさん】
リスタート・ケータイのことは、福祉課の就労支援員さんから聞きました。私は、生活困窮者向けの宿泊所にいたのですが、どうしても一人暮らしがしたかったです。施設に不満があった事と、自由な時間が欲しかったことが一人暮らしをしたい理由です。以前、宿泊所の電話番号を連絡先にしてアルバイトをしていました。ところが、バイト先からの連絡を、なぜか宿泊所の職員は私に取り次がない。職員にそのことを尋ねてみると、時間外の電話利用は禁止との事。仕事によっては、どうしても電話連絡が必要な場合がありますよね。その電話は、深夜ではなく朝の時間帯だったので、繋いでほしかった。ルールはもちろん大切ですが、ルールが厳しすぎたら生活を立て直すのに支障がでてしまう。

自分のペースで生活をするために、早く働いて一人暮らしをしたい。私の想いは、日に日に高まっていきました。私は福祉課の就労支援員さんに就労の相談をしました。すぐに就職活動を始めましたが、連絡先がない状態では全く仕事が決まらない。面接にすら進めない。書類選考で落ちるたびに、働く意欲は低下しました。連絡先が空欄の履歴書を出す時は、恥ずかしさと悔しさが入り混じり、どんどん気持ちが負い目になってしまう。どうせ落ちるんじゃないかという気持ちで履歴書を作っていました。

そんな私の状況を見かねて、支援員さんがリスタート・ケータイの事を教えてくれたんです。就職活動だけではなく、アパートの契約時にも連絡先がいることを聞き、改めて携帯電話の必要性を感じました。ブラックリストでも携帯電話の契約ができるなんて半信半疑でしたが、一度話を聞いてみようと思いました。

携帯電話を手に入れると
1回目の応募で内定へ

生活困窮者向けの宿泊所から自立を目指していたIさん。Iさんは、就職活動をしようとしても、施設の電話番号を利用できずに苦戦していたのだ。集団生活の中では一定のルールは必要だろう。しかし、職場への連絡先として宿泊所の電話番号が機能しない事は意外だった。生活困窮者支援は、少ない予算やボランティアで行われているケースが多く、手厚い支援は困難だ。だからこそこのような連絡不備が起こることも理解できる。国や自治体は、急に公的資金を生活困窮者支援に回すことはできないだろう。個々の支援者の連携が必要で、切れ目ない支援の構築が不可欠である。次に、Iさんに、リスタート・ケータイを利用していただいた感想を聞いてみた。

【Iさん】
正直、契約するまではリスタート・ケータイのことを疑っていましたね。ブラックリストでも契約できる携帯電話は、怪しかったり高かったりするじゃないですか。でもリスタートは違った。直接内容を聞いてみると、価格が思っていたよりもずっと安かったです。プランも申し分なかったので、その場で契約を即決しました。

契約手続きが終わると翌日には携帯電話も届き、すぐに履歴書作りを再開しました。これまでは恥ずかしくて連絡先が空欄の履歴書を提出することが嫌でした。それが、ようやく連絡先を記入できるようになった。応募の負い目となっていた問題が解決できて、本当に嬉しかったですね。早速出来上がった履歴書で清掃会社に応募をしてみました。すると面接の連絡が来て、なんと1回目の応募で内定をいただけました。それまでは、5回応募して面接は1回できればいい方でした。なので、あっさり仕事が決まったことに驚きましたね。今は、駅前の大通りや商店街の歩道で落ち葉やごみの撤去をする仕事をしています。暑い日や寒い日もあって大変ですが、とてもやりがいを感じていますよ。日中しっかり働くと、お酒とご飯がものすごくおいしくて体にもいい影響が出ています。

携帯電話を緊急時の連絡先として利用できることも大切です。以前住んでいたアパートで隣人が孤独死した事がました。自分もそうなるんじゃないかと不安に思っていました。もしもの時に、携帯電話を持っている安心感こそが重要です。ケースワーカーさんや就労支援員さんも、私と連絡が取りやすくなり喜んでくれている。携帯電話番号はアパート契約時も必ず必要となるので、携帯電話の契約ができたことは本当に助かりました。リスタート・ケータイは使い勝手も良くて、仕事や緊急連絡先として大活躍していますよ。

家族と胸を張って再会することを目標に、自立した生活を目指す

宿泊所生活から、
アパート暮らしへ。
そして別れた家族との
再会を目指す。

インタビューの為にIさんの元へ向かうと、Iさんは私に働いている現場である商店街を案内してくれた。たくさんの人が利用する道路を整備しているIさんは、苦労とやりがいを語りながらも以前よりすっきりした表情をしていた。私も元気なIさんを見て、仕事のやりがいを実感した。最後に、仕事も始まってこれから一人暮らしをすると意気込むIさんに、今後の目標や夢を聞いてみた。

【Iさん】
私は、若い頃に車やブランド品など、欲しい物は一通り購入してきました。なので、今更高級な物が欲しいといった欲はありません。今の目標は、まずはフルタイム勤務への切り替えと、アパートでの自立した生活ですね。宿泊所での生活は、少々気疲れしてしまいますから。

早くひとり暮らしができるように頑張っています。最近少し食べ過ぎてふっくらしたので健康に気を付けながら自立を目指していきたいです。

夢は、ずっと会っていない家族に会いに行く事。子供や孫、元嫁さんとは長いこと会っていないです。会いたい気持ちは強いけれど、今の状態ではかっこが付かないので会えない。私は、しっかり自立して生活環境を整えたら、皆に会いに行くと決めています。

impressions

家族に会いたい。Iさんの話を聞き、生活困窮者の方たちの中には理由があり家族に会えない人もいることに改めて気が付いた。私は、その夢を叶える手助けができたことを嬉しく思う。別れ際に「頑張れよ」と声をかけてくれたIさん。その言葉に、私は「君はこちら側に来ないように一生懸命頑張れよ。」と叱咤激励がこめられていた気がした。今回も、日々の生活を頑張ろうと背中を押してもらえるようなインタビューだった。

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